第2回 暗視野観察法
暗視野観察法とは、暗いなかに光が指して被写体だけが光る照明の当て方によるものです。
被写体のみが浮かび上がって観察できる観察方法です。
20世紀初頭に、オーストリア出身のリヒャルト・ジグモンディによって発明されたこの観察方法は、
染色したりする前処理の必要がなく、そのまま観察できる特徴を持っています。条件にもよりますが、顕微鏡の解像限界より小さい粒子や細菌などの存在や動きを、検出できるという特徴も兼ね備えています。また、宝石のキズやクラック等の観察にも暗視野照明法が使われています。
では、この様な暗視野効果を作り出すには、どのような光の当て方が適切なのでしょうか。
微生物等の観察には、透過で光を直接入れるのがほとんどですが、被写体に直接光を当ててしまうと暗視野効果は起こりません。直接光を遮り、被写体に斜めから光を当てると暗視野効果が起こります。
使用する対物レンズの開口数より大きな角度の光を斜めから入れると暗視野効果が鮮明に起こります。具体的には、透過照明部に中心を遮ったスリット状のものを使用し、そのスリット部分だけを光が通過する構造を作ることになります。このことで、屈折や乱反射した光だけが対物レンズに入るように光を曲げる(回り込ませる)と、周りが暗くて被写体がけが光る絵がとれることになります。
暗視野観察は、工業系にも応用されています。たとえば、クレジットカードなどに使われているサイズのICチップに、傷がついているとします。その傷を観察する場合、そもそもICチップが小さいうえに、上から光を当てると反射して傷が見えません。フィルムのカメラで撮影をする際に、光が直接入射して被写体がぼやけて写ってしまう(白く飛んでしまう)状況を、思い浮かべてもらえればいいでしょう。直接光でなく、周りから光を当てることで、傷を浮かび上がる(光らせる)ことができるのです。被写体に直接光を入れるのではなく、端から当て込むのが暗視野照明の特徴なのです。
朝日光学では、この暗視野観察法の利用の仕方として明視野観察法との併用が良いと考えます。
直接光を遮ることでおこるこの観察法は、逆に言いますと被写体の分解能の追求には不向きであると考えます。よって、明視野観察法で被写体の絶対的な分解能を確認し、暗視野観察法で被写体の形状や存在を確認することを弊社は推奨いたしております。